お客さまは、この、突然のできごとに短く息をのんで、目に、すこし涙を浮かべていました。
「どうぞ、お好きなだけ摘んでいってください。かんむりもつくってください。」
お花屋さんは嬉しそうにいいました。
 お客さまは、ドアから少し離れたところに腰を下ろして、ていねいに両手いっぱいのたんぽぽを摘みとって、お花屋さんと、自分に1つずつかんむりをつくりました。
それからしばらくの間、ゆっくり、大切そうにたんぽぽ畑を見回していました。
最後に、すくっと立って、大きく息を吸うとお花屋さんに言いました。
「ありがとう!」

 「本当に何もいらないの?」
すっかり満足して、部屋にもどってきたお客さまはなにかお返しをしたいと思っていいました。 「はい。だってこんなに素敵なかんむりをつくっていただきました!」
お花屋さんは頭の上のかんむりに触れて満足そうに笑いました。
お客さまもつられて笑います。
「あ、そうだ!これ、お土産です。あの丘で最初の綿毛。この店を出たら、振りかえらないで一息に吹いてください!」
 お客さまがその綿毛を受けとってやっぱり小さめのドアを開くと
お花屋さんの明るくてはずんだ声のありがとうございましたが聞こえました。

1人の女の子が、1つの小さなお花屋さんからでてきました。
女の子の前には殺風景の長い1本道が遠くまで伸びています。
 女の子の手には、きちんとラッピングされたたんぽぽの花束と
いっぽんの綿毛。
少し歩いてからそれをじっと見つめて、女の子は一息で吹き飛ばしました。
真っ白な綿毛が、真っ青な空をめがけて飛んでいきます。
女の子はまぶしそうにそれを仰ぐと、フッと視線を戻しました。
 そこには...

     ― お花屋さんはとっても綺麗なお土産をくれたのです。
女の子の後ろには、もうお店はなかったけれど。


     女の子はとても満たされた気分で、たんぽぽで埋め尽くされた1本道を歩いていきました。

                      Happy end♪     
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